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手を取り合って乗り越える。カラブリア州コセンツァの何層にも渡るセーフティーネット

ナポリ由来の文化で、Caffè sospesa(カッフェ・ソスペーザ)という物があります。
バーでエスプレッソを頼んでお支払いの際に、1杯分の代金を余計にお支払いしたりお釣りを断ったりする事でバーに積立金が溜まり、コーヒーの代金を払えない方が積立金のあるバーで好きな時にエスプレッソ・タイムできるようにする、というシステムです。

ナポリ文化圏のコセンツァ市にもこの風習が強く残り、確かレッジョカラブリア市にもあったと思います。
地元では金額的にも「積立金してます!」と言うほど立派な物では無くて、日本のレジの脇にある募金箱ぐらいの感覚だし、エスプレッソ1杯が1ユーロ(約120円)しないので、凄く気軽&身近にCaffè sospesaの文化があります。

それをふまえて。

コロナ禍の影響で、カラブリア州内では約28万人が「今、食べるものが無い」状況にあると言われています。州の人口は約300万人。およそ10人に1人の割合です。(出典:3/30Quicosenza
どうしても手続きや決定に時間がかかる国や州の補償を待っていられない状況になる事はわかり切っていたので、州内ではコロナウイルスの影響が社会に大きく影を作る前、具体的には2月初旬の段階から様々な準備が水面下で行われていました。

まず、国や州がぐだぐだ言っている間がもったいないので、Banco Alimentare(バンコ・アリメンターレ)という、無料で食料品や生活必需品を受け取れる基地が州内各所に作られました。Banco Alimentareは自治体が有志企業の協力を得て提供するサービスです。

さらに、各都市でSpesa sospesa(スペーザ・ソスペーザ)が自治体主導で発足。スペーザはお買い物の意味で、お買い物代金を積み立てしちゃおうという活動です。
Caffè sospesaのちょっと大きいバージョンで、レジでお釣りを受け取らなければOKだったり、募金箱があったりと参加しやすい形態を整えた自治体もありました。
↑はレッジョカラブリア市のもの。

Banco AlimentareやSpesa Sospesaが行き渡った4月初旬ころ、やっと国から生活困窮者向けの保護が到着しました。
国からは、お買い物に使える商品券(実質的な金券)と、パスタなどが山盛りの緊急食糧&生活必需品パックが困窮家庭に配られました。
自治体が食糧パックに独自に上乗せしたので地域差がありますが・・だいたい1週間~2週間弱はなんとかなるかな?といった量だったようです。

ただ、このBanco AlimentareとSpesa Sospesaには大きな弱点があって、サービスを受け取るにはカラブリア州内に正しく居住している人などという、色々とうるさい縛りがあるんです。
国の食糧パックや商品券も、すでに2か月に及んでいる外出禁止の生活をするうえでは焼け石に水、程度のもの。
そこで、

一般の小売スーパーのなかには「このカート内の物、持って行ってOK♪」なサービスを始めるところが増えました。
お店が積極的にカート内に品物を補給しているけれど、お買い物する人もパンや缶詰・お菓子など日持ちしそうな食料品を余分に購入してカートに入れておけば、必要としている方に届けることが出来るという方法です。

(必要としている人が小売店まで行かないとダメだけれど)

ちなみに、1㎏の大きなパンでも2€(250円くらい)です。お手軽ですよね。

それでも!
それでもこのカートのある小売店にたどり着けない場所で、困っている人もたくさんいます。外出が厳しく制限されている現在、どちらかと言うとスーパーのある街まで出られない場所で困っている家族の方が多いんだそうです。

そこで、カラブリア州内で機能している最後の最後のセーフティーネットは、民間のボランティアによって運営されている困窮者生活保護団体です。

コセンツァ市には色々と団体があってそれぞれ頑張っていますが、そんな中で「ここを知らなかったらモグリ」と言われるぐらい超有名な団体が1つありまして、La Terra di Pieroといいます。

この団体、このブログを書いている4月20日の段階で、困っているコセンツァ市内のご家庭に毎日約600家庭分を配食しています。
600食じゃなくて600家庭分ね。凄まじい量なので2度言いました。(コセンツァ市は人口約7万人です)

普段は食堂を完備した施設でサービスを行っているんですが、外出禁止令が出た以降は配食サービスに切り替えました。
これまでの利用者へのサービス+αぐらいだろうと思っていたら、配食希望者が激増したんだそうです。

コロナ禍の関係なくずっと活動している伝統ある団体で、コセンツァ市民の信頼も厚い団体で、彼らのような団体がカラブリア州内だけでなくイタリア各地の都市部には必ず複数あって、様々な補償・保護から漏れてしまう人たちのセーフティーネットとしての役割を果たしています。(国が頼りにならないのでね・・)

と、いうわけで。
私が住むコセンツァ市のセーフティーネットは、

・国や地方自治体からの金券/物資直接配給
・地方自治体による食品配布ポイント
・民間有志による各種食料品補助が2層(配布ポイントと直接配食)

以上の4層構造で稼働中です。

さて。このLa Terra di Piero。
コロナ禍に際し、こちらの団体には協賛する企業・個人から寄付金も食材もばんばん届いているけれど、配食を必要としている家庭もどんどん増えていて、支援は多いに越したことが無いと、こんなサービスも始めました。

画像小さくてスイマセン。
地元のワイン屋と共同で「ワインを買って応援」の活動です。
こちら、セレクトワイン(協賛するカラブリア州のワイナリー産)6本で送料込み75ユーロと破格のお値段なんですが、売り上げの30%が寄付されます。
ついでに、ワインの売り上げはちゃんとにワイナリーに支払われるんだそうで。
つまり、ワイン屋はボランティアするっていう事ですね。。

ワイナリーはワイナリーで、レストランの販路激減などでワインが売れなくてすっごく困っているし、協賛ワイナリー中に私が知らないワイナリーがいないという状況で・・・まぁ地元ソムリエとしては、買うしかないじゃん(笑
注文して、2日で到着しました。

(送料削減の為、協賛ワイナリーの社長が持ってきました。浮いた送料分も寄付するんだそうです。)

どん。The地元な飲みやすいラインナップでございますね。
ボトル見ているだけで生産者の顔がぱぱーっと浮かんで、みんな。。頑張っているなぁと思います。。

カラブリア州をはじめとする南イタリアは、感染者の激増も無く、新たな感染者の発生も非常に控えめになってきているので・・ロックダウン解除が早くに行われるのではないか、と言われています。
それでも、経済的に大変な状況に変わりは無く、恐らく。。。この先しばらくはみんなで助け合っていかねばならないはず。

セーフティーネットがしっかりと働き、みんなで笑顔で「あの時は大変だったね」と言える日が一日でも早く来るよう、それぞれができる事をそれぞれの分野で地道に行っているな、という印象が強いカラブリア州コセンツァ。
みんなで助け合ってこの危機を乗り越えようとしています。

Andrà tutto bene.

ところで、こちらの記事で日本のプラットフォームについてまとめした。
キャンセルになってしまった食材を販売したい農家さんや、お客さん減少で困っているレストランを探すことが出来るので、ぜひどうぞ♪(


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この記事を書いた人

澤井英里のアバター 澤井英里 Sawai Eri

イタリア半島の南端・カラブリア州在住。普段は専門職、趣味で現地コーディネーターやアテンド、通訳などをしています。一応ソムリエ。かに座のAB型。

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