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餓死者を出さないサバイバル知識。カラブリア州の保存食文化

南国・常春なイメージのカラブリア州。確かにイタリア半島南端に位置し、場所によっては「常春」。冬でも春の野の花が咲き乱れる地域もありますが、州の7割は山岳地帯~高地で冬は意外と厳しい地方が多いんです。スキー場が州内に4箇所ほどあるぐらいだし。

で、貧しく現金収入のなかった農家さんたちが必死に考案したのが保存食作りの技術。これは「保存食作りの技術が高い=冬場の餓死者を減らせる」構図につながっていて、実は命にかかわる非常に切実な・真剣な背景の下で発達してきました。

保存食を作るには、とにかくボツリヌス菌の発生を抑えないといけません。ボツリヌス菌は無味無臭。そして間違って摂取すると確実に死ねる危険な菌です。しかも麻痺性毒。。。無味無臭のくせにボツリヌス、怖い子! (ただ、加熱すると死滅(失活)します)

ちなみに、人間を容易に殺せる威力を持っている菌などは無味無臭が多いんだとか。酸っぱかったり色が変わっていたら気がつくけれど、そーいう菌では相当量摂取しないと致死量に至らないんだそう。無味無臭君たちに気をつけませぅ。。

保存食を作るには、

  • 塩漬けする
  • 砂糖を使う
  • 酢漬けする
  • 乾燥させる

の方法しかありませんでしたが、アラブ人の持ち込んだ唐辛子の効用に気がついて以降のカラブリア州内では

  • 唐辛子(カプサイシン)を使う

という、第5の方法が発達します。また、塩と唐辛子を一緒に使い風味もUPさせる方法を開発。唐辛子と似ているパプリカも使い、郷土料理として今日まで伝えてきました。

塩&唐辛子&パプリカで有名なのが、カラブリア州北部地域で作られている生シラスの保存食。木樽で熟成させる微醗酵食材です。これ、カラブリア州内のほかの地域では作りません。気候風土が向いていないので、カビたり腐ったりするんだそうですよ。たまーに工場生産の物もありますが・・あれは別物w

豚肉の加工品も、そんな保存食のうちのひとつ。豚の解体に適した冬場に一気に作業が行われ、初夏に掛けて気温が上昇仕切る前に熟成が済むように工夫されています。冬に豚を解体するには、春に子豚が生まれる必要があり・・・何百年前の人たちもサイクルをちゃんと考えて作業していたんですね。

カラブリア州の一部では、豚皮も塩&唐辛子で漬け込む習慣のある場所があります。ちなみに昔から豊かな街だったコゼンツァ市ではコレを作りません。さらに東岸部では別の物に加工されたりしています。そういえば・・州内全域で同様に作られている保存食ってトマトソースぐらい? あ、あれも家庭差あるかw

生のまま漬け込まれた豚皮は、豆料理に加えられるなどして旨み調味料的な使われ方をします。これも現金収入の少なかった農家さんの知恵。豆と野菜のお料理に動物性たんぱく質を加え、さらに旨みUPな一石二鳥なアイディアなんです。しかもこの方法で漬け込むと長持ちするしらしいですよ。2年はOKなんだとか。

カラブリア州の一部では、ツナ缶も自宅で作ります。昔からツナ缶作りは女性の仕事とされていて、これも漁村が今に伝える「漁に出られないときの非常食つくり」の知恵。時代が下ると、漁村の貴重な現金収入ともなりました。

マグロが回遊してくる春~初夏にかけてが作業時期。我が家でも5kg~8kgぐらいのマグロを持ってきてくれる漁師さんがいて・・・もう必死に作りますですよ。

 

夏に山盛り取れる野菜も何もない冬用に大量に保存食とされます。今でこそ食卓に並ぶと歓声の沸く一品となっていますが。。。70年ぐらい前まで、冬の間はコレしかない農家さんもいっぱいいたんだ、と思うと。。当時の生活の厳しさに胸が詰まります。。

イタリア各地にはいろいろな保存食が今に伝わっていて、そんな地味な一品からかつての生活を想像する。そんな食卓もアリかな、と思いますよ。

豊かになった現在では保存食作りをする人自体が少なくなってきていますが、それでもまだまだカラブリア州内では伝統の味を守り続けるマンマと味を次に伝える若手がいっぱい。「カラブリア州の」ではなく「わが村の」「我が家の」味が今後も長く食卓にあり続けるのはほぼ確実で、その点で私、カラブリア州の皆さんを誇りに思っております(笑

※保存食作りは、8月下旬~9月下旬ごろが最盛期。豚肉関係は12月末~1月末、その他の野菜はその野菜の旬の時期に行われます。特に夏野菜の保存食作りの最盛期である8月下旬~9月下旬は、お料理レッスンのお申し込みが大変多いので、早めのご予約をお願いします♪

 

 

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この記事を書いた人

澤井英里のアバター 澤井英里 Sawai Eri

イタリア半島の南端・カラブリア州在住。普段は専門職、趣味で現地コーディネーターやアテンド、通訳などをしています。一応ソムリエ。かに座のAB型。

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