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アフリカ豚熱(ASF)発生をうけ、イタリアからの豚肉等一時輸入停止が長引いている件

イタリア北部でのアフリカ豚熱発生をうけ、2022年1月初旬よりイタリアからの豚肉等が一時輸入停止になっています。現段階(1月21日)で終息の目途は全くたっておらず、今後、停止措置の長期化も想定される事態となっており、経緯と今後についてを考察します。

目次

経緯

イタリアは長いことアフリカ豚熱洗浄国(サルデーニャ島除く)だったのですが、年初に北イタリアのピエモンテ州で、野生のイノシシからアフリカ豚熱(ASF)発生が確認されました。
アフリカ豚熱って何?な方には、農林水産省の説明がわかりやすいのでどうぞ

アフリカ豚熱(ASF)は、ASFウイルスが豚やいのししに感染することによる発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病です。

ダニによる媒介、感染畜等との直接的な接触により感染が拡大します。

有効なワクチンや治療法はなく、 発生した場合の畜産業界への影響が甚大であることから、我が国の家畜伝染病予防法において「家畜伝染病」に指定され、患畜・疑似患畜の速やかな届出とと殺が義務付けられています。

我が国は本病の清浄国であり、これまで本病の発生は確認されておりませんが、アフリカでは常在的に、ロシア及びアジアでも発生が確認されているため、今後とも、海外からの侵入に対する警戒を怠ることなく、本病の発生予防に努めることが重要です。

なお、アフリカ豚熱は豚、いのししの病気であり、人に感染することはありません。

農林水産省サイトより抜粋

日本政府は、イタリアから国際獣疫事務局(OIE)への通報を受け、1月8日からイタリアからの豚肉等の一時輸入停止を決定しました。

該当ページ→ (農林水産省)

イタリア国内の対応

ピエモンテ州内でアフリカ豚熱発生をうけ、イタリア政府はピエモンテ州と州境を接するリグーリア州の広い地域で狩猟の禁止(一部許可制で条件付きの狩猟可)、トリュフ含むキノコ狩の禁止等を決定しました。

山に入った人間が問題のウイルスを媒介するダニをくっつけて移動してしまう可能性もある為、指定地域内でのトレッキングなどのアウトドアスポーツももちろん禁止です。

この措置は、とりあえず6か月間の予定。

指定地域内で飼育されている豚の処遇(?)ですが、野外放し飼いや家庭で飼われている(管理方法がはっきり記録されていない)豚は、国が定める衛生基準を満たさない場合は例外なく殺処分。養豚農場が管理する完全室内飼育の豚に関しては、殺処分を行わない事が決定しています。

完璧に管理されているからウイルスと出会う機会が無い。殺処分絶対反対!!! といった、完全室内外施設を持つ養豚農家たちの声を政府が聞き入れた形ですね。

その後のイタリア国内におけるアフリカ豚熱発生状況など

1月21日の段階で、ピエモンテ州内で12件、リグーリア州内で3件の発生が確認されています。さらに現在、4件が検査結果待ちの状態です。

現地では絨毯爆撃式に一斉検査が行われているはずですが、とにかく指定地域が広く、検査するべき家畜も多くて発生から2週間過ぎても「検査終わりました!」の報が入って来ません。
時節柄、色々制限が多いので仕方が無いのかもしれないけれど、流入ルートの解明もこれからの状況です。

発生数が徐々に増えている…と国も危機感を持っており、指定地域内のイノシシが移動できない様近くを通る高速道路沿いにイノシシ用の柵を設け、イノシシの移動範囲を制限しようといった動きも出ています。

ただね、頑張っても来週から技術的な協議が始まる見込みなんですよね…
ちょっとゆっくりだよね…

今後の見通し予測

アフリカ豚熱をうけた輸入停止解除までのスタディケースとしては、2014年のポーランドでの発生と2018年のベルギーでの発生が挙げられると思います。

2014年2月にポーランドでアフリカ豚熱が発生した際、今回と同じように即時輸入一時停止の措置が取られました。その後「条件付きで輸入して!」というポーランド政府の要請を受けて2015年3月に部会内で諮問が始まり、2016年3月の段階で「ゾーニングや上乗せの管理措置をした上で輸入OKって事にします」と決定。
この決定までに、発生確認から2年が経過しています。
※その後、ポーランドや近隣国でアフリカ豚熱が再発生&再々発生しており停止措置解除に至らず、協議続行中。

一方、2018年9月から輸入一時停止となったベルギーについては、ベルギー国内でのアフリカ豚熱清浄性が確認されて2021年8月末に停止解除となっています。
この間、3年。3年…。

ここで悲しいことに、イタリアも停止措置の解除まで数年単位で掛かっちゃうんじゃ疑惑が発生しております…

恐らく、今後養豚農家や豚肉加工関連業者などから条件付き輸入解禁に向けた動きが活発化するだろうけれど、この動きを受けてイタリア政府が日本側をノックして協議が始まって…と少し長い道のりが必要になりそうです。

一方ベルギーのお隣、フランスは…

ところでフランスは、2018年に国境を接するベルギーでアフリカ豚熱が発生して大騒ぎになった経験があります。
で、それを踏まえたアフリカ豚熱発生時の対応について日本側と家畜衛生条件の締結に向けて動いていて、「仮に仏国内で発生しちゃったとしても、ゾーニングした上で輸入して?」というフランス側の言い分を日本側が色々、色々吟味しているところ。

何かが締結された様子はないのでまだ色々と協議している所なのだろうと思いますが、発生を予想して国内のアレコレを整備したり、それを輸出国(この場合は日本)に伝え、最悪のケース発生時について予め協議しておくって賢いよね。こーいったところは流石だなぁと思います。イタリアも頑張って欲しい…

さいごに

哀しいことにイタリアについては、日仏間のような協議が行われているという話は聞かない上、イタリア国内においてもイノシシの行動範囲を狭めたり、指定地域内での検査の徹底などをこれから行う様なので…最悪輸入停止が数年単位になる可能性も否定できません。

時節柄色々と大変なのはわかるけれど…もう少しなんとかならんのか。

南伊在住者としては、他国と地続きなのにイタリア全域からの輸入停止というのはかなり「え?」というカンジもします。ピエモンテ州はもうすぐそこがフランスやスイスだし、問題のウイルスの運び屋とされるダニやイノシシに国境という概念()はもちろん無いのであちこち行き放題だろうし。(だからこそ、初期封じ込めが大事なんですが)

一方でイタリア半島の南端・カラブリア州までは1000㎞以上離れているし、シチリアは島なのに…などと思ってしまいます。
物流も人の流れも北は北でぐるぐるしているので、最早、国単位でどーこうできる問題でもなさそうに感じますが、日本の決定は仕方のないことでもあるし、素早い対応は流石だなぁとも感じます。

恐らく現在、フランス側でも徹底的な防除が行われていると想像しますが、コロナ禍において増えまくっているイノシシという脅威をどこまで封じ込められるのか。緊張の春となりそうです。


ところで、農水省のサイトで「イタリア・サルジニア島」っていうのがさんざん出て来るのですが…もしかして…サ、サルデーニャのこと…でしょうかね? ちょっと気になりました。

参照/参考
農林水産省
アフリカ豚熱発生状況について
アフリカ豚熱のゾーニングを適用したポーランドからの生鮮豚肉の輸入に関するリスク評価について

Gazzetta Ufficiale (官報)
Sky 24
ANSA
La Stampa

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この記事を書いた人

澤井英里のアバター 澤井英里 Sawai Eri

イタリア半島の南端・カラブリア州在住。普段は専門職、趣味で現地コーディネーターやアテンド、通訳などをしています。一応ソムリエ。かに座のAB型。

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