手にするたびに心が安らぐ。昭和すぎる祖母の遺品なお料理本

母方の祖母がまだ元気すぎる頃、昭和48年(1973年)出版のあるレシピ本を譲り受けました。祖母が大好きだったお料理の先生の著作で、おそらく日本の出版業界初めての「家庭料理の本」。出版当時2冊買いをした祖母は、1冊を「普段用」もう1冊を「保存用」として長年大切にしてきました。で、私が譲り受けたのは保存用の方。普段用はすでに無くなっていたけれど、きっと使い過ぎで廃棄されたんだと思います。。

というより、40年以上前に2冊買いっていう感覚があったんだなーという方がオドロキだったりしてw

本の外側を覆う箱(?)もしっかり綺麗。祖母から譲られた本は、土井勝先生(1995年没)の「家庭料理」です。土井勝先生は、現在ご活躍中の土井善晴先生のお父さま、ですね。

2009年のイタリア移住の際にもしっかり持って来て、レシピに用事が無くてもぱらぱらとめくる本だったりします。

家庭料理の本だけあって、ごはんの美味しい炊き方に半ページも割いている、基本の基本を教えてくれる一冊です。

この本を私に譲った際、おそらく「こんなにお料理が出来ないでかわいそうに」的な危機感を祖母は持っていたと思うんですが(笑)、譲り受けてから20年ほど経った現在の私にとっては、イタリア暮らしの中で食生活が迷走気味になったり、「何となくご飯作るの面倒くさいな」なんて気持ちが続くときに手に取る一冊になっています。

40年ほど前の主婦たちがどんなお料理を目指していたのか、どんなお料理を毎日作っていたのかが良くわかり、ダラケタ自分に喝が入るというかw

あれ? 譲られてからもう20年も経ってるの??っていうのもオドロキなんですけど。。。。

肝心のレシピは、なんと魚料理から始まります。挿絵も可愛い♡

魚の次は肉・卵・野菜・・と続き、豆料理・お漬物や和え物にも相当数のページが割かれているのが特徴かと。特に肉料理のレシピは少なく、逆にお漬物レシピが膨大です。酒の肴10種なんていう、入れたいレシピを全部入れちゃいました!的な面白いページもあったりで、見どころ十分。

作る工程は文章のみで説明されているものの十分詳しく記載してあるし、ご飯の炊き方、三杯酢の作り方、出汁の引き方などいわゆる「基本の基本」にも言及していて至れり尽くせりです。

食べ物と「食べる行為」にしっかり向き合っていて、レシピサイトよりもこちらの方がずっと好き。

精進料理で有名なあいまぜのレシピも。これ、かつては自宅で作ってたんだーっていうレシピも沢山あります。実は主人が好きなレシピもこの本の中にw 昭和な味付けが好きなカラブリア人・・w

なにより、うまみ成分を使った複合調味料が発売される前のことなので、レシピにいちいち「だし」の記載があって、それぞれのレシピにおススメお合わせ出汁についてもしっかり説明があります。例えば「ご自宅で昆布とカツオで出汁を取られているなら濃さが足りないので、××を加えると良いでしょう」的な。昭和40年代、なんて豊かな食生活だったんだろう!

出汁を引くのが当たり前だったんだなー。。なんて思うと、当時割烹着を着て台所をしていただろう祖母の姿が思い浮かぶようだし、きっとその姿は白黒写真とかで見た記憶の中の姿なんだろうけれど。。懐かしくもあり、自分ももっとしっかり台所仕事をしないとな、と思うわけで。

なんだか忙しく情報に追われている中で、このとてつもなく「昭和」なイメージに心安らぐし、祖母が作ってくれた、おかゆやおにぎりの味にいつか追いつけるといいなぁと背筋を伸ばして台所仕事に向かうモチベーションになっています。まぁきっと追いつけないけどねーw

ところで。最後のページには大日本製本紙工業株式会社の検査員さんのサイン証までしっかり残っていました。手書き・・。

どれだけ大事にしてたんだ(笑

まさかイタリアに来てまで出汁を引くことになるとは思っていなかったけれど、40年以上の時を経てもなお、現役で使っております。親指が当たる表紙部分だけ汚れが出てきていますが・・今後も台所の大切な指針の一つであり続ける本だと思っています。

土井先生、ありがとう。譲ってくれた祖母にもありがとう♡ そして、ご飯を食べてくれる主人にもありがとう。

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この記事を書いた人

澤井英里のアバター 澤井英里 Sawai Eri

イタリア半島の南端・カラブリア州在住。普段は専門職、趣味で現地コーディネーターやアテンド、通訳などをしています。一応ソムリエ。かに座のAB型。

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